昨日の朝…
昨日の朝のことです。
顔を洗おうと階下に下りて行くと、主人が神妙な顔で立っていました。
「今日、女の子(女性のアシスタントさん)来る?」
昨日締め切りの仕上げが少し残っていたので、3~4人来ることになっていました。
「来るけど…何?」
「いや、鳥の死骸を何とかしてもらおうと思って…」
鳥の死骸…?
時代劇のカラー原稿を同時進行で2本進めているので、男の人たちだけでは手が回らなくなり「鳥の死骸の絵を誰かに描いて欲しい」という話なのだろう…と解釈しましたが、ちょっとふざけた回答をしてやろうと思いました。
「何とか…って、死んだ鳥を生き返らせて欲しいってこと?」
「いや、それは無理だろう…。その…死骸を埋めるとか、何とか始末して欲しいんだ」
主人の話によると、朝方の5時半頃、寝ていたソファの足元で「ドーン!」という、すごい音が聞こえたそうです。
こんな朝早く誰も外を歩いていないだろうに、いったい何の音だろう…と外に出てみると、窓の下でウグイスのような小鳥が、ピクピク…と羽を僅かに動かしてひきつっていたそうです。
仕事中いつの間にか寝てしまい、机のスタンドが点いたままだったで、おそらくその灯りを目指し、窓に激突したのではないか…と言うのです。
「可哀想に…。あの音ではおそらく死んでいる。でもその死骸を、俺も下の男の子たちも始末することが出来ないと思う」
そこへ、いつも他の人よりの30分早く来るアシさんがやってきたので、話をして窓の下に2人で行ってみました。
…でも、そこには鳥の死骸は無く、鳥のフンがひとつ落ちていただけでした。
「死骸など無かったよ。フンがひとつ落ちてただけだよ」
「そうか…。じゃあ気を失っていただけで、気がついてどこかに飛んで行ったのか…。ああ良かった…。きっとショックでフンが出てしまったんだろうな。どこかでタンコブをつけて飛んでいる鳥を見かけたら、よろしく言っといてくれ」
よろしく…って。
本当にこの人は漫画家になるために生まれてきたんだな…って、つくづく思いました。