年末から何度もぶり返していた風邪から、やっと開放されて仕事に没頭できると思った先月のこと、朝の6時過ぎに自宅にいる姑から電話がかかってきました。
「どうしよ! もうこんな時間なのに、まだ買い物に行ってへん! 晩ご飯どないしよ!」
「え…? お姑さん、まだ朝の6時過ぎですよ」
「え…朝…? 今日は何月何日の何曜日や?」
答えると、午前中に老人会の会合があるのに、頭が朦朧として出席できないので、同席する人に連絡をしたい…と言うのです。
「こんな時間に電話をかけちゃダメですよ。相手の方に迷惑ですからね。あと1時間ほど待ってくださいね」
もう一度布団に潜り込みながら、嫌な記憶が蘇りました。
今から30年前、実家の母親が脳梗塞で倒れた…という連絡が父から入りました。倒れた場所が階段の上だったので、そのまま階段を転げ落ち、大怪我を負って救急車で運ばれ、生死をさまよったものの何とか助かったのですが、退院後、早朝や深夜に頻繁に母から電話がかかってくるようになったのです。
「頭が朦朧として、今が朝なのか夜なのかわからない…」
何とか宥め、話し相手になっていたのですが、その時の母の症状と似ているのです。
母はまだ50代でしたが、運動障害や言語障害は免れたものの、脳梗塞のクスリを今も飲み続けています。
主人に相談し、姑を病院に連れて行ってMRIで検査したところ、脳が壊死したところが4箇所白く映し出され、予想していた通り「脳梗塞ですね」と言われました。
「すぐに手術や入院が必要ですか?」
「まだ血液検査の結果が出ないと何とも言えませんが、今のところ大丈夫でしょう」
帰りの車の中で姑はクスッと笑いながら、私が外で待っている間に行った検査の様子を話しました。
「いきなり目の前にハサミとかセロテープとか5つほどの文具を広げてな、サッと隠して『今、目の前にあったものは何ですか?』って聞くんや。幼児の知能検査と一緒やな」
その検査の2日後、今度は「首が痛くて回らない」というので、再度病院に付き添い、
レントゲンやCTスキャンで首から背骨を検査したところ、軟骨が無くなった背骨の部分が擦り合い、そこが腫れて痛みを伴っているのだとか…。
「人間ってこうやって少しずつ壊れていくんやな…」
週に2~3回の治療とクスリのおかげで、しばらく休んでいた夕飯の支度も何とか出来るようになりましたが、姑ももう80歳…。いつまでも若く元気でいられるとは限りません。