先月、新しく入った美容院で「ネイルシャイニング」という爪磨きをやってもらい、まるで透明のマニュキュアをつけたみたいに、ピカピカ状態が続いていたので気を良くし、6日前に帝国ホテルの新春会に出る前に、今度は「オンジェルネイル(爪の上に、爪と同じぐらいの厚みのジェルをコーティングすること)」をしてもらいました。
「新しい爪が伸びるまで1ヶ月ぐらい持ちますよ。しかもこれを付けることによって、自前の爪も強く丈夫になるので、爪のおしゃれが楽しくなります。一度付けると、きっと病み付きになりますよ」
髪のカラーリングやトリートメントを待っている時間内で、片手ずつ乾かしながら何度も重ね塗りしてもらい、春色の淡いピンクの爪をこの6日間、周りの人間に誇らしげに見せ回ったものです。
他の新春会は体調が悪かったのでキャンセルしましたが、連日の打ち合わせでピンク色の爪が人目に晒されることが多く、いつもなりふり構わない私が、どういう心境の変化で爪のお洒落に目覚めたのか、かなり興味を持った様子でした。
「ステキですね」
「ステキでしょ? とても漫画家の指とは思えませんよね? 爪を綺麗にしていると、お化粧や服装にも気を遣いたくなるから不思議ですよね」
ちょうど仕事の締め切りが無い週でしたので、汚すことも傷つけることもなかったのですが、明日から仕事態勢に戻らなければいけないというのに、つい爪を庇って、動作も緩慢になってしまいます。
昼間、昼食を食べに自宅に帰ると、昨夜のものからと思える食器が、台所に山積みになっていました。
昨夜は打ち合わせのため、編集さんと夕飯を食べて帰ったのですが、その間に手芸教室を開いている姑が、生徒さんに渡す材料を切り分けようとして、カッターで左の親指を切ってしまった…というのです。
「大丈夫ですか?」
「もう血は止まったから大丈夫やけど、洗い物はある程度溜まってから、ゴム手袋をして洗おうと思てな」
「そんな…休んでください。私が洗いますよ」
食器や鍋やフライパンをガシャガシャと洗い、食後のリンゴの皮を剥き始めた時です。右手親指のジェルに傷が付き、半分ほど剥がれているではありませんか…!
上から一生懸命押さえましたが、一度剥がれるとタオルや服に引っかかり、気になるのでとうとう親指のジェルを綺麗に剥がしてしまいました。
午後から机に向かい、予告カットのペン入れやネームの作業に入ると、剥がれた親指以外の爪が妙に気になり、結局残りの9本の指のジェルも、綺麗に剥がしてしまったのです。
1ヶ月どころか1週間も持ちませんでしたが、これでもう爪の汚れを気にせず、仕事にも家事にも没頭出来そうです。